lock, stock and barrel

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story(階層)の記事の時に映画My Fair Ladyの話題を出した。映画の中で、ヒロインにフラれるイケメン貴族ことフレディの役を演じていたのが、ジェレミー・ブレット(Jeremy Brett)だ。そして、Jeremy Brettといえば、やはりグラナダテレビ版のドラマ、シャーロック・ホームズだろう。
シャーロック・ホームズのドラマの決定版とも呼ぶべきこのシリーズは、徹底的に原作に忠実な映像化を目指して作られており、実に素晴らしい出来となっている。Jeremy Brett演じるシャーロック・ホームズも、まさに万人が思い浮かべるシャーロック・ホームズ像を見事に再現しているといえる。

……のだが、僕には多少違和感がある。その違和感は、Jeremy Brettの演じ方が悪いとかそういうものではない。世間で一般的に捉えられている、あるいは世間が求めているシャーロック・ホームズ像と、原作を読んだ時のシャーロック・ホームズ像の違い、といってもいい。おそらく、僕と同じことを感じている人も多いはずだ。

つまり、シャーロック・ホームズはあんなまともな人間じゃないはずだという違和感だ。

壁に銃弾で文字を描き、なにかといえば変装して情報を仕入れ、初対面の人物に自分の推理力をひけらかし、暇になったらコカインを打ってるような男が、そもそもまともな男のはずがない。

少し変わったところのある紳士?とんでもない。エキセントリックな変人(紳士のフリもできなくはない)だ。

その意味ではガイ・リッチー(Guy Ritchie)監督、ロバート・ダウニー・Jr(Robert Downey Jr.)主演のシャーロック・ホームズの映画は、実に素晴らしい出来だ。あれこそが、まさに真のシャーロック・ホームズだと、個人的には思う。

そのGuy Ritchieが監督した最初の長編映画が、”Lock, Stock, and Two Smoking Barrels”である。と、ここまでが前置き。

日本語でもそのまま「ロック、ストック&トゥー・スモーキング・バレルズ」なんてタイトルにされていたが、意味の分かるような分からないようなタイトルだ。このタイトルには、まずその元となる言い回しが存在する。それが”lock, stock and barrel”というフレーズだ。その意味は、「何もかも全部」「一切合切」といったところだ。

なぜlockとstockとbarrelで”everything”な意味合いになるのか?

もっとも単純な構造の銃を考えてもらいたい。先込め銃、つまり火縄銃であるとか、マスケット銃といったものだ。

まず必要なのは、銃身だろう。銃身には最初に火薬が詰められ、次に弾が入れられる。
そして、火薬に着火する仕組み、点火装置も必要だ。
銃身と点火装置を直接持つと危険だし、狙いもつけづらいので、持ち手、すなわち銃床も必要となる。

そう考えた場合、銃に最低限必要な部品というのは、点火装置(lock)、銃床(stock)、銃身(barrel)の3つということになる。lock, stock, and barrelというわけだ。

この中で若干分かりにくいのは、なぜ点火装置がlockなのか、ということだ。火縄銃を想像してもらいたい。銃身の後方に詰められた火薬は、火道とよばれる、導火線の働きをもつ細い穴により、さらに銃身の上にある火皿に繋がるようになっている。

ちなみに、火皿には事故による暴発や、火薬が落ちるのを防ぐために、火蓋という部品がついている。火蓋を切る、の語源はここにある。

銃を撃つ時は、火蓋を切り(開けて)、火皿に火縄が触れることにより、着火を行う仕組みになっている。火縄は火ばさみによってはさまれ、火皿の上に固定(lock)された状態となっており、引金やレバーに連動して火ばさみが落ちる仕組みになっている。
この、一連の仕組みをlockと呼ぶのだ。

銃の進化は、lockの進化の歴史でもある。matchlock, flintlockなど様々な点火の仕組みが生まれていき、現在のように雷管を叩く方式に行き着いたわけだが、ここでは話題が逸れすぎるので割愛する。興味のある人は、調べてみてもらいたい。

昔はlock, stock, barrelそれぞれに別の職人がいたので、銃を入手するためにはそれぞれの職人を回らなければならなかった。そこに目をつけた商売人が、うちに来ればいちいち回らなくても全部買えますよ、という宣伝として”Lock, Stock, and Barrel”という言い回しを使いだした、ということらしい。

さて、映画のタイトルは”Lock, Stock, and Two Smoking Barrels”だ。このタイトルは、”lock, stock and barrel”という言い回しをもじったものであると同時に、ある特定の銃を想起させる。2つの銃身を持った銃、すなわち水平二連ショットガン(ダブルバレルショットガン-Double Barrel Shotgun)だ。

そして、クライムアクションものでダブルバレルショットガンといえば、まず思いつくのが銃身・銃床を切り詰めたソードオフ・ショットガン(Sawed-off Shotgun)だろう。屋内での取り回しが容易な上に、コートなどの下に隠しやすい武器でもある。近距離専用の、極めて暴力的な印象を持つ銃だ。しかも、タイトルには”Smoking”とついており、銃を撃った直後、というイメージまで付加されている。

そういった、暴力的な犯罪を予感させるタイトルになっているわけだ。

ところが、ここがGuy Ritchieらしいひねりだと思うのだが、実はこの映画で重要な役割を持っているダブルバレルショットガンは、昔貴族が狩猟に使っていたような、骨董品の銃だったりする。

さらに、確かに暴力的なシーンのある映画なのだが、実は主人公たちは……といったところで、続きはネタバレになってしまうので止めておこう。是非映画を観てもらいたい。

ところで、余談なのだが”lock, stock and barrel”と同じ意味の言い回しに、”hook, line and sinker”というものがある。釣り針(hook)、釣り糸(line)、錘(sinker)というわけで、釣りの仕掛けの構成要素となっている。

一部で有名な珍作B級SF映画「メガフォース」で「釣り針、釣り糸、錘作戦」なるものが実行されるのだが、これが”Operation Hook, Line and Sinker”なので、上記の言い回しを意識したものと思われる。

今回一番驚いたこと。なんとメガフォースはBlu-rayが発売されている。DVDすら怪しいと思っていたのに……。

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