マクロスプラス

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今年の更新についてはまずアニメを3つ紹介……というとおこがましいな……3本のアニメにまつわる思い出話などを語る予定としている。3本に共通するテーマのようなものも無くはないのだが、それは最後の作品で明かすことにしよう。覚えていれば。

2本目に取り上げるのは、マクロスプラス。
実はこの作品には、一巻が発売される前の試写会に行った思い出があったりする。

正確には、試写会に連れて行ってもらった、と書くべきかもしれない。試写会にしょっちゅう応募・当選している友人がいて、様々な映画の試写会にしばしば誘ってもらっていたのだ。なんならこの前作、マクロス2も試写会に行ったような記憶がある。

さて、作品は新居昭乃の透き通るような歌声から始まる。たくさんの風車が回る丘。手作りらしき人力飛行機を飛ばす男子が二人と、ヒロインっぽい女の子。三角関係+飛行機。男女比は逆だが、マクロスだ。

場面転換し、宇宙空間へ。小惑星帯をバックに、いわゆる板野サーカスと称される、いかにもマクロスといった、背景動画をともなう豪勢なカメラアングルの変化とお約束のようなミサイルの乱舞を含む、激しい立体機動の空戦シーンが始まる。わずか1分半のシーケンスだが、何度も見直したくなる魅力にあふれている。

この主役の過去と現在、天才肌だが無鉄砲な性格を自然に描写しつつ、同時にマクロスの戦闘シーンに観客が期待しているものも惜しみなく見せてくる、開幕の一連の流れは実に見事で、試写会の会場で「あ、これは買わないとダメだ」と確信させられたものだ。

このマクロスプラスであるが、個人的に、アニメ史上において非常に重要な位置を占める作品だと考えている。

なぜか?

一つには、監督(デビュー)・渡辺信一郎、音楽・菅野よう子、脚本・信本敬子という、黄金トリオの結成作品であるからだ。この同じメンバーによる次の作品が、かの「カウボーイ・ビバップ」であるが、その萌芽は間違いなくこのマクロスプラスにある。なんなら、声優も二人(林原めぐみ・石塚運昇)共通しているくらいだ。

信本敬子の脚本らしく、ストーリーラインは大人向けのものとなっており、脇を固めるキャラクターもそれぞれ個性的で、一種の群像劇となっている。特に、内海賢二演じるミラード大佐が実にシブ格好いい。さらに書いておくなら、3話は敢えて戦闘シーンを入れず、森山ゆうじを作画監督として、しっとりとしたドラマ展開を見せてくれたりもする。

菅野よう子の音楽も、アニメとは思えない豪華なメインのオーケストラに加えて、劇中重要な役割を果たすAI歌姫「シャロン・アップル」のポップな曲や、カラオケ屋のシーンで掛かる謎の曲まで、実に多彩なものとなっている。……もちろん、サントラも買ってある。

そしてもう一つアニメ史的に重要なのは、この作品は最後の「セル画による」板野サーカスが観られる作品だということだ。毎回シチュエーションを変えた戦闘シーンは、ひとつひとつが見ごたえのあるものとなっているが、白眉なのはやはり4話で、これをセル画で描いたの?と、当時から信じられない思いであった。

そして、そこへ最後の極めつけの上乗せとして、後に出た劇場版「マクロスプラス MOVIE EDITION」で追加されたのが、かの「伝説の5秒」と呼ばれるシーンである。中割無しの全原画という話を聞いたことがあるが……恐ろしい。

板野一郎が特技監督をした次の作品「マクロス・ゼロ」以降の戦闘シーンは、CGによるものとなっている。もちろん、表現の幅や精密さはCGの方が上なのだろう。しかし、あのセル画による、一種の狂気に満ちた作画をもう観られないのだと思うと、少し寂しくもある。

是非一度鑑賞してみてもらいたい。……いや、一度鑑賞した後、これを手描きしたのか~と考えながら、もう一度コマ送りで見てみてほしい。僕の言わんとしていることが、きっと伝わるはずだ。

さて、この作品、マクロスと名がついてはいるものの、シナリオが他のシリーズ作品と比べて全体的に独立している。ちなみに、もともと全く別の企画だったものを、マクロスの世界観に当てはめて製作したものらしい。

そんなわけで、マクロスとか観たこと無いんですけど、みたいな人でも十分楽しめる作品となっている。超時空シンデレラとかも出てこない。むしろ音楽が敵側に回るという、異端の作品である。是非体験してもらいたい。なんなら、OVAと劇場版と両方観てもいいだろう。

そしてこの作品を観た後は、「カウボーイ・ビバップ」を観る。そして最後に「スペース☆ダンディ」を観ながら、……あれ……渡辺信一郎監督、実はどっちかというとこういう方向性のほうが好きなの……?という不思議な気持ちに包まれて欲しい。

まぁ、サムライ・チャンプルーでもカウボーイ・ビバップでも、単発で結構すごいギャグ回があったりするので、たぶんそうなんだろうな……もちろん僕も大好きだけど。あ、一番好きなのはゾンビ回です。

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