Let me tell you. The feeling of being there, of walking the streets of the future is going to be breathtaking!
(one of the audience) YOU’re breathtaking!
You’re breathtaking. You’re all breathtaking!
Keanu Reeves, E3 2019
2019年のE3において、Cyberpunk 2077のカンファレンス中、登場したキアヌ・リーブスと観客との間で行われたやり取りである。
breathtakingは、一般的には「息を呑む」と訳されることが多いのだが、原義からいうと「ため息が出る(ほど素晴らしい)」でもいいように思う……まあ、今回の本題ではないのでスルーする。
さて、みんな大好きキアヌ・リーブスである。
彼ほど一般人から愛されているハリウッド俳優は、稀ではないだろうか。その人柄は、しばしば”down to earth”と表現される。ご存知でない方は、ぜひ一度“Keanu Reeves down to earth”と検索をしてみてもらいたい。数々の素敵エピソードがあなたを待っている。
ところで、”down to earth”は、辞書によっては「地に足のついた、現実的な」といった訳しか書かれていない場合もある。なので、もしかしたら、上で挙げた表現に違和感を覚えた人もいるかもしれない。
実は、先の例での”down to earth”は「親しみやすい、謙虚な」という意味なのだ。
では、なぜ「現実的な」と「親しみやすい」という全く違う意味を持っているのかということについて、意外なくらい解説されていないようなので、一応書いておこうというのが、今回の本題である。
まず、「現実的な」について。
この場合の”down to earth”は、”have one’s feet on the ground”と同じ意味と考えると分かりやすい。しっかりと地面に足をつけて歩いているイメージというわけだ。まさに「地に足のついた」という訳がピッタリである。
反対の意味の表現としては、”have one’s head in the clouds”というのがふさわしいだろう。頭を雲に突っ込んだ、空想にふけっている、という意味合いである。これによく似た意味の、少し変わった表現では、”he’s in la-la-land”なんて言い方もできるかもしれない。
次に、「親しみやすい」について。
これは、”up in heaven”の反対の意味だ……といっても、”up in heaven”という慣用表現は無い。強いていえば、”out of one’s league”となると思うが、日本語で言うところの「高嶺の花」である。
つまり、天国にあるもののように、手の届かないものではなく、地上に降りてきている=手が届く、というわけだ。転じて「親しみやすい、謙虚な」という意味合いとなる。
ところで、1920年代の広告において”affordable, reasonable price”という意味で、”down to earth”という表現が使われているらしい。こちらの記事では、”down to earth”は、”out of this world”と関連がある表現ではないかと推測しているようだ。”out of this world”、つまり、この世界にはない、普通じゃない、常軌を逸したといった意味の反対としての、”down to earth”ということだろう。こちらの説のほうが、多義的な言葉の性質をすっきりと表せる。
しかし僕は、上記で挙げた大きく分けて二通りの使われ方が、結果的に一つにまとまってしまったのではないかと勝手に推測している。
いずれにせよ、”he’s a down-to-earth guy”なんて紹介された時には、friendlyなのかそれともpracticalなのか、確認しておいたほうが、後のトラブルは少ないかもしれない。
今回は、以上。
ところで、キアヌ・リーブスといえばスピードとかマトリックスとかジョン・ウィックが代表作といえるだろう。これらの作品は、それはそれでいいのだが、個人的には自ら監督をしている「ファイティング・タイガー(Man of Tai Chi)」を推しておきたい。
いや、特にすごく面白い作品というわけではないんだけど、キアヌ・リーブスの変な嗜好が詰まっている作品というか、妙に味のある映画なんだよね……同じ年に47RONINとかにも出演してるし。
ジョン・ウィックでアクション俳優として一皮むけたきっかけも、実はこのあたりにあるんじゃないかなーと勝手に想像している。