宇宙モノのゲームが好きなのである。
いや、無論他にもいろいろと好きなゲームはあるのだけど、やはり青春時代にスペースオペラものの小説を大量に読んでいた影響が大きいのだろう、心の根っこに染み付いたスペース魂によって、宇宙を舞台とした壮大なスケールのゲームを、無性にやりたくなることがある。
さて、宇宙ものと一口で言っても様々なゲームがあるわけだが、ここで話題にするのは、宇宙を股にかけ、こっちの商品をあっちで売りさばき、時には戦争に巻き込まれ、時には海賊を退治し……みたいなゲームである。
ジャンルとしては、宇宙交易戦闘シミュレーター(Space Trading and Combat Simulators)と呼ばれることが多い。
あれ……それって光栄(現:コーエーテクモ)の「大航海時代」みたいなやつじゃない?と思われた方も多いと思う。実は光栄も、過去に宇宙モノの大航海時代のようなゲーム(というか、リコエイションゲームというべきか)「プロジェネター」を発売していたりする。ややマイナーで知られていないのが残念なところではある。
さて、僕自身がこの手のゲームにハマったきっかけは、Origin社の”Space Rogue”、そしてMicroprose社の”Elite Plus”という2つの洋ゲーである(またMicroproseか……)。僕の記憶によると、わりと近い時期に発売されていたと思う。ざっと調べた感じでは、Space RogueのPC98版が1990年、Elite PlusのPC98版は1992年とのことだ。ちなみに、オリジナルのEliteは1984年の発売で、ワイヤーフレームだったらしい(PC98版はポリゴン)。
Space Rogueは、どちらかというとストーリー重視のRPGに近い作りで分かりやすいゲームだった。ステーションなどに降りると、昔ながらのRPGっぽい見下ろし型視点での移動になり、他の人物と会話を交わしたりする。それにより、メインのストーリーラインが進行していったりする。
もっとも、メインストーリーを放っておいて海賊稼業にいそしむなどといったことも可能で、自由度はかなり高かった。他に個人的に覚えていることとしては、重力スイングバイを利用して移動するのが妙に気持ちよかった記憶がある。
それに対して、Elite Plusは遊び始めた当初、正直何をしていいのかがわからないゲームだった。……そう、つまりは「何をしてもいいゲーム」だったのだ。このゲームは、宇宙船を操縦し、星々を探索しながら交易をし、採掘をし、戦闘をし、機体を改造・購入し、また探索をし、交易をし、採掘をし、戦闘をする。言ってしまえば、ただそれだけのゲームだ。ただ、そこに妙な中毒性がある。
今風に言えば、フリーロームのサンドボックスゲーム、みたいな言い方になるのかもしれない。大航海時代を、もっとストイックに煮詰めたようなゲームである。そういえば、少し後にArtdinkが”Lunatic Dawn”というRPG(のような何か)を出しているが、似たようなストイックさだった覚えがある。
さて、最初に紹介するゲームは、2014年にFrontier Developmentsによってリリースされた、Elite Dangerousだ。
この頃、僕は20年も前に遊んでいたElite Plusのことなど、すっかり忘れ去っていた。Elite Dangerousを初めて見たときですら、そういえば似たようなゲームを昔遊んでいたな……あれなんてゲームだっけ……?ってな感じであった。しばらくしてから、え?あのゲームの続編なの?いまさら何故?と、やや混乱したぐらいである。
Elite Dangerousは、敢えて言えば、びっくりするほど昔のEliteと同じゲームである。
そこには、プレイヤーが船を駆って宇宙を救うなどといった、分かりやすいメインストーリーなどは全く無い。あるのは、ただ上で挙げたElite Plusと同じような、無骨なミッションの集合体だ。
一応多人数参加型のミッションなども用意されているが、別にやってもやらなくてもいい。ソロプレイヤーにも優しい……というか、万人に厳しい作りといえる。
宇宙は万人に厳しく、ゆえに孤独に優しい。
ただ、最新の技術によって生まれ変わったこの作品の臨場感は、実に素晴らしいものとなっている。細部まで作り込まれた宇宙船の内装・外装、遷移航法から脱出した直後に目の前に広がる恒星の威容、ステーション周辺で行われる無線通信の音声、天の川銀河をそのまま再現したと豪語する(ゲーム内の恒星の数は4000億)マップ、全プレイヤーが何年やっても一向に増えない探査領域のパーセンテージ(2019年に発表された探査済みの領域は0.036%程度)……。
なんなら、宇宙船であっちこっち行くだけでも楽しめなくもない。土星のようにリングを持った美しい天体、中性子星のジェット噴流(これを利用して遷移航法の距離を伸ばすテクニックなども)、ブラックホールの不思議な存在感などなど、見どころもたくさんある。太陽系にだって行ける(要進入許可)し、アルファ・ケンタウリにも行ける(ステーションまで遠い)。
Elite Dangerousは、諸手を挙げて全ての人におすすめできるタイプのゲームでは、全く無い。
有って無いような、明らかに内容の足りていないチュートリアルを終えると、いきなり広大な宇宙に放り出される。そこには道標は何もない。
基本システムですら理解しづらく、コミュニティによるサポートに投げっぱなしの感すらある。……もっとも、アップデートにより、これでも昔に比べると大分マシになってはいる。やれることが多い分、それぞれの要素をきちんと理解し、操作に習熟するには、それなりに時間がかかるだろう。
肝心のゲーム内容も、上でも挙げたように、言ってしまえば単調な作業の繰り返しだ。ゲームシステムとしてプレイヤーが得られる報酬は、結局、所持金残高の増加でしかなく、言ってしまえば、労働と変わらない。
所持金を増やしてどうするのかって?……もちろん、新しい機体と装備を購入し、同じことを、より効率的に行うのだ!
この乾ききってむせそうなシステムの中に、自分のしたいことを見いだせる人にとっては、やる価値のあるゲームかもしれない。
また、文字がやや読みづらいことを除けば、VRとの相性が非常に良いゲームなので、VR環境を持っている人は、ぜひ試してみていただきたい。
なお、残念ながら日本語版は無い。そのためもあってか、海外ではPS4/XBOX One版が出ているのだが、日本ではどちらも発売されていないようだ。Amazonで輸入品はあるようだが、マルチプレイ時の問題などがあるようなので、基本的にはPC版をおすすめしておく。
Frontier DevelopmentsによるElite Dangerous公式サイトはこちら
https://www.elitedangerous.com/