draconianは、残酷な、厳格な、などの意味を持つ形容詞だ。一般的には法律・規則などにかかる単語だが、人や行動に対しても使用できる。
曰く、その語源は紀元前7世紀のアテナイの立法者Draco(Δράκων/Drákōn)とのこと。Wikipediaのドラコン (立法者)を参照すると色々書いてあるので、ここでは割愛するが、例えばキャベツを盗んだものは死罪、なんてことが英語版の方に書いてあったりするので、相当厳しい法律を作成した人ではあるようだ。
とまあ、上記のことを知ったのは調べたあとのことだ。実のところ、僕が最初にこの単語を聞いたときに思い浮かべたのは、かの「ドラゴンランス」シリーズ(リンク先はamazon)に出てくる種族「ドラコニアン」だった。少し年季の入ったファンタジーファンなら同じことを思い浮かべるのではないだろうか。
さて、ドラゴンランスに登場するドラコニアンもそうだが、ドラゴン(dragon)に関係する形容詞・名詞が造語として出てくるときは、draconic, draconianなどのようにdracon-という形になることが多い。おそらくはdragonの語源、ラテン語の dracōに由来しているのだろう。ちなみに、同じくdracōから派生した単語が、(やはりドラゴンを意味する)drakeだ。
そしてさらに遡ると、その元はギリシア語のδράκων(drákōn)となる。……ん?drákōn?なにかドラコンさんと関係があるのかしらん?
上記 δράκων(drákōn) は、さらにその元をたどると古代ギリシア語δέρκομαι(dérkomai)の変化型ではないかという説があるようだ。その意味するところは「はっきりと見る」「鋭く見る」。もしそうであるとすれば、人名に使われるのはそこまで不自然ではない。
立法者Dracoと空想生物ドラゴンは、語源の上では兄弟みたいなものなのかもしれない。
ところで、もともとギリシアでδράκων、あるいはローマでdracōが指していたのは、大蛇のことだったらしい。ヨーロッパ圏では見られない、インドやアフリカの大蛇の話が(誇張されて)伝わった結果、いろいろな記録として残されることになったようだ。おそらく、星の王子さまが描いた、象を飲み込んだウワバミのようなものだろう。
一方で、(蛇っぽい)得体のしれない巨大な怪物のことをなんでもδράκωνと呼んでいたフシもある。
こういったあたりを調べていくと、ドラゴンという言葉の指している概念は、時代を経るに従って変化しており、かつ世界中の伝承を飲み込んでいった結果、実に多様なものの集合体となっていることがわかる。D&Dの表紙や、ウェールズの旗に書かれているものだけがドラゴンではない。
ヤマタノオロチだって、ブルース・リーだってドラゴンなのだ。