今回は短めの小ネタ。最後がやや成年向けなので注意。
たまには本職がゲーマーらしいところを見せるべく、ゲームの話題から入ることにしよう。
海外製のゲーム、いわゆる「洋ゲー」文化の中に、MODと呼ばれるものがある。MODification、つまり改造のことだ。
改造と聞くと、日本のゲーム文化の中では、どちらかといえばアンダーグラウンドなイメージを持つ人が多いかもしれないが、洋ゲー文化圏では、むしろ開発者とコミュニティが一体となって、ゲームに対する改造を楽しんでいる感がある。
現在eSports界隈で一番プレイヤーが多いと思われる、League of LegendsやDOTA2などのMOBA(Multiplayer Online Battle Arena)や、スポーツ系FPSの雄Counter Strikeなど、元々はファンメイドのMODであったことを考えれば、その影響力の大きさが分かるかもしれない。
もちろん、ファンタジー世界の月をニコラス・ケイジに変えるなどといった、出落ちのようなMODもあったりするわけだが。
さて、そういったゲームでは、開発者側もMODを簡単にゲームに組み込めるような仕組みを用意しており、ユーザーは好みのMODを入れたり、あるいは組み合わせて遊んだりすることができる。
そういった環境において、MODを一切入れていない、つまりは「素」の状態のことを、vanilla―バニラと呼ぶのだ。
このvanillaという単語の形容詞的な使い方は、別にゲームに限ったわけでもない。なんらかの事物の(オプションを抜いた)最も単純な形のことを、vanilla、あるいはplain-vanillaなどと言ったりする。普通の、味付けのない、平凡な、などといった意味で用いられる。
言葉の由来は明らかにアイスクリームやプリンといった、デザート類のフレーバーだろう。例えば「アイスクリーム」と言ったときに、フレーバーを指定していなければ、おそらくそれはバニラ味のアイスクリームだろうから。
この言い回しは18世紀終わり頃にはもう使われ出されていたらしい。思っていたよりも古い歴史があるようだ。いかにバニラがみんなに愛されたかの証拠と言えなくもない。
ところで、1970年台のゲイムーブメントの時代、ゲイコミュニティで「ノーマル」な性行為のことをvanillaと呼んでいたらしい。
……という話を最初に聞いたとき、僕は少し誤解してしまって、ヘテロなセックスのことをバニラと呼ぶのかと思ってしまったのだが、そうではない。あくまでもホモセクシュアルな文脈の中で、例えばSMだとか3Pだとか味付けのない、ごくノーマルなセックスのことをバニラと呼んでいたそうである。
なるほどなるほど。
最後に、vanillaとvaginaは語源が一緒(ラテン語で「鞘」)だったりする。
……ということを踏まえると、vaginaは使わないvanillaなセックスなわけですな、と笑いを取れるような気も……いや、実にインテリな笑いですな、ハハハ。
以下2019/8追記。
どうも「ゲイ バニラ」といった語句の検索でこちらの記事にたどり着く方がそこそこいるようなので、もう少し詳細を書いておく。
日本において「バニラセックス」の意味を調べると、挿入を伴わないセックスを意味する、と解説されていることが多いようだ。
しかしながら、元々の意味はあくまでも「普通のセックス」である。問題は「普通」というのは地域や文化によって異なる可能性があるという点にある。
ただ、例えばアメリカの一般的な意味合いでいうと、オーラルやアナルを用いたセックスは”vanilla sex”の範疇に入るらしい。
そういう意味では、日本のゲイが海外のコミュニティにおいて誤解をする可能性もあるかと思うので、気をつけてもらう方がいいかもしれない。