まず辞書を引くと、意味は非道、蹂躙といった暴力的な意味が並んでいる。北野武の映画にそのものずばりアウトレイジ(outrage)というのがあったが、もちろん暴力をテーマとした映画だ。字面もものものしく、明らかにout(超える)+rage(怒り)という構造かのように見える。
しかしその実、rageとはなんの関係もないのが、この単語の面白いところだ。
さかのぼると、古仏語のo(u)ltrage、そして起源としてはラテン語のutlraに行き着く。ウルトラ、つまり何かを超えるという意味だ。極端な、あるいは一線を越えている、つまりモラル的・法的に問題のある、といった意味だった。実際、英語として使われ始めた当初1300年ごろは、現在のような暴力的な意味合いはなかったようだ。
ところが、綴りがout+rageに見えてしまうことから、誤解されて使用されるようになった。18世紀には憤怒といった意味で使用されている用例もあるらしい。まさしくoutなrageという意味にすり替わったわけだ。
ちなみに1600年ごろに書かれたシェイクスピアのハムレットにある、あの有名な独白、To be, or not to be: that is the questionに続く一節では、outrageousは荒れ狂うといったニュアンスで使用されている。
whether ‘tis nobler in the mind, to suffer the sling and arrows of outrageous fortunes.
余談になるが、rageの語源はラテン語のrabies(狂気・怒り)から来ている。その同じrabiesから来た単語が、rabies(狂犬病)だったりする。なるほどといった感じだ。