エヴァとナデシコとエスカフローネ

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1995年といえば、アニメファンにとっては特別な年だろう。
そう、新世紀エヴァンゲリオンのTV放映が行われた年だ。

久しぶりのガイナックスによるTVアニメとあって、アニメ専門誌などでは放映前から特集が組まれ、アニメファンからの注目度も高い作品だった。僕も初回からリアルタイムで観ていた。当時のことなので、VHS(標準)で録画したのを覚えている。
とはいえ、放映当初は、一般人まではその名は知られていなかった。伝説となったのは、おそらくは、「あの」ラスト2話が放送された後のことだと思う。

少しだけエヴァについて語ろう。

僕自身は、あのラストに関しては、単にやっちゃったか~といった感想だった。
そもそも物語が終盤に入ったあたりから、次回予告が絵コンテになったり、やけに止め絵の演出が多くなったり(カヲル君の最期など典型的だ)と、制作進行が間に合っていないのは明らかだった。
だから、まともな終わり方にはならないかもなぁ、と半ば覚悟していた。案の定、ラスト前から一般的な作劇を放棄した作りになっていた。
そういう意味では、最終回を観たときは、制作現場が破綻していく中、頑張って終わりっぽい作りにしたんだな、といったぐらいの感想しかなかった。後に巷にあふれることになる解説本の類で、やけに深読みした解説があったとしても、そんな深いことを考えて作ったわけじゃなかったんじゃないかな、と冷めた感じで読んでいた。

そして後に(2回目の)劇場版が公開され、それを観に行った時は、結構感心した記憶がある。あそこからよく話をここまでまとめたものだと。
TV版のラスト、そして物語が未完に終わった1回目の劇場版を経て、制作現場、そして庵野監督はそうとう追い詰められた環境だったと思う。
そんな逆境の中、あの劇場版による最終回は、実に見事な着地点だったし、物語としても、きちんと完結していたと思う。
物語の中で徹底して「拒絶」を描き、TV版、劇場版と経て世の過激なオタクたちに「拒絶」され、それをも「拒絶」してみせた作品の最期は、なんと「拒絶」によって世界が救われるというものだった。僕は、そう解釈している。

当初の構想はおそらく貞本義行によるコミック版のエヴァに近いものだったのではないだろうかとか、仮にそれがそのままアニメになっていたとしたら、現在のように、社会現象にまでなるほどの伝説のアニメにはなっていなかっただろうなとか、そういったことを想像したりもする。

閑話休題。

エヴァが放映された翌年、1996年にも、アニメファンの注目を浴びた作品がある。
機動戦艦ナデシコだ。
実は膨大かつ緻密な設定に基づいた極めてマニアックなストーリー、そして現実からアニメ内アニメまでの階層構造を持つメタネタの嵐が組み合わされたこの作品は、ゲキ・ガンガー3の暑苦しさと、(サブ)ヒロインであるルリルリの愛くるしさの融合反応により、熱狂的なブームを巻き起こした。
ストーリー構成は會川昇だったのだけど、過剰とも思える設定を詰め込んでくる (近年でいうとコンクリート・レボルティオに繋がるような)作風が始まったのは、この頃だったのかもしれない。

エヴァとナデシコは、もちろん全く別の作品なのだが、膨大な裏設定であるとか、いわゆるお約束的な展開の拒否といった点は、どこか似ていたのかもしれない。
ただ、どちらかというとナデシコはそういったエッジの効いた部分を、メタなネタを含めたコメディで上手く包み隠していた気もする。
全体的に観て、非常に丁寧な作りの作品だった。

さて、上で話題に出した、新世紀エヴァンゲリオンと機動戦艦ナデシコ、丁度この2つの作品に挟まれる時期に放送されたのが、赤根和樹監督の初監督作品でもある「天空のエスカフローネ」だ。

少女を主人公とした、異世界ファンタジー+ロボット+恋愛という実に意欲的なアニメだった(のだが、ぶっちゃけ河森正治が少女漫画の原作を書いたらこんな感じ、といった趣ではある)。
ところが、蓋を開けてみれば、エヴァやナデシコと違い、変にひねったところのない実に王道の、素晴らしい作品であった。

王道の作品をきちんと作れるのは、いい監督に決まっているのだ。何故なら、王道の作品では、シナリオの展開が読みやすい分、一つ一つの演出の積み重ねによる、きちんとした説得力が重要になってくるからだ。
僕がスタッフクレジットで赤根和樹の名前を意識するようになったのは、この作品からだ。

しかし、王道でありながらも、 時々混じる変なテンションの恋愛シナリオは、やはり河森正治の原作のせいだと思う。おそるべし、河森正治。特に第19話「恋の黄金律作戦」はある意味必見だ。あの終盤であのシナリオを持ってくるとは……運命改変装置って一体……。

他にも、声優陣がやけに豪華だったり(坂本真綾のデビュー作でもある)、絵コンテに渡辺信一郎が参加していたりと、見どころも多い。そんな「天空のエスカフローネ」だが、結果的に90年台の代表的作品であるエヴァとナデシコに挟まれた時期に、王道の異世界ファンタジーで勝負を挑む形になったためか、そこまでの爆発的な人気にはならなかったように感じられるのは、残念なことだ。

で、実はここから本題に入ろうと思っていたのだけど、長くなったので一旦筆を置くことにする。
ダイジェスト的に適当に書き散らかす余談のほうが本題よりも長くなるのは、いつものことなのでご容赦頂きたい。

次回のアニメ語りでは、本当は今回紹介したかったアニメについて語る予定……たぶん。

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