double down

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アメリカがトランプ政権に変わって以来、メディアで多用されているのがこのフレーズ、”double down”だ。

double down自体は自動詞として使用される句動詞で、一般的にはdouble down on~といった形で現れることが多い。例えば、こんな感じだ。
潜在的にリスクのある計画や行為を、より強力に推し進めるといった意味なのだが、簡単には翻訳しづらい。

なぜなら、この言葉は、実はカードゲームの用語に由来しているからだ。

裏を返せば、そのゲーム用語としての”double down”をきちんと理解することで、この言葉が持つ意味合いを、より細かく感じとれるともいえる。というわけで、元々の用語を説明しよう。

さて、由来となったカードゲームとは、ブラックジャック(Blackjack)のことだ。名前や、ごく基本的なルールくらいは聞いたことがある人が多いと思う。

ブラックジャックは、親(ディーラー)と子、それぞれの手札の合計を比べあうカードゲームだ。その際、JQKの絵札は10と数え、Aは1と11のどちらに数えてもよい。手札の合計が21に近いほうが勝ちとなる。

以下、一般的なカジノでのブラックジャックのルールを簡単に説明する。

まず、子がそれぞれ賭け金を決める。その後、全員にカードが2枚ずつ配られる。この時、親のカードは1枚を裏向きに、1枚を表向きに配られる。

子は、それぞれの手札(と親の表向きのカード)を見て、追加のカードを引く(hit)か、カードをそれ以上引かず数字を確定させる(stand)かを選ぶことができる。(例えば、手持ちの2枚の合計が19ならば普通はstandするだろうし、7ならhitするだろう)
hitは望む回数繰り返すことができるが、合計が21を越えてしまうとbustとなり、その時点で(親の手を待たずに)負けとなってしまう。

子がそれぞれの数字を確定させると、最後が親の番となる。親はカジノ側なのだが、カードを引くか引かないかという裁量は持っていない。一般的には、機械的に合計が16以下ならhitし、17以上ならstandする。

親がbustした場合、bustしていない子が全員勝ちとなる。親がbustせずに数字が確定した場合は、お互いの数字を比べて21に近いほうが勝ちとなる。

さて、子は上記の基本ルールに加えて、いくつかの特殊な行動を取ることができるのだが、そのうちの一つが、今回の話題となるdouble downだ。

手札が2枚の状態の時、つまり最初の追加カードを引くかどうかを決める際、代わりにdouble downを選択できる。すると、賭け金が倍になり、追加のカードが1枚配られる。ただし、それ以上追加のカードを引くことはできない。つまり、必ず3枚の手札で勝負することになる。

例えば、$10の賭け金で最初の手札が2と9(合計11)だったとしよう。ここでdouble downを選択すると、掛け金は$20に上がり、追加のカードを1枚引くことになる。追加のカードが10か絵札なら合計21になり最高だが、たとえAを引いて合計12になってしまったとしても、もう一枚追加でカードを引くことはできない。

このように、double downはただ賭け金を倍にするだけではなく、次の一枚に勝負を賭けるという、非常にリスクを伴う行動でもある。ここから、double downという句動詞が誕生したわけだ。

英辞郎 on the webでは、なぜか

double down
【句動】
倍賭けする◆ギャンブルにおいて、負けるたびに賭け金を2倍ずつ増やし続けること。負けが続いても、勝った時点でそれまでの損金を全て取り戻すことができる。

という明らかに誤った解説をしていて少し驚いた。

これはマーチンゲール法(Martingale betting system)と呼ばれる賭け方の手法に関する説明であって、double downとは何の関係もない。

他の辞書でも大抵は、「倍賭けする」といった簡単な解説にとどまっている。しかし、この言葉の元には、ただ賭け金を倍にするというだけではない、さらに強い意味合いが含まれているのが、元々の用語の解説から、感じられたのではないかと思う。

余談だが、日本語には囲碁や将棋、あるいは麻雀の用語がもとになった言葉がたくさんあるのに対して、英語にはカードゲームやチェスの用語がもととなった言葉がたくさんある。この辺りは文化の違いが感じられて面白い。

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