awfulとawesome

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前回の記事中でhorrificとterrificの話を書いたが、awfulとawesomeの関係も、少し似ていて面白い。

一見すれば分かるように語源は同じで、awe+fulとawe+someから出来ている。
-fulも-someも、~の性質を持つ、といった意味の形容詞を作る接尾辞。aweは非常に古い言葉で、元々の意味は「恐怖」。
つまり、語源上の意味合いとしてはawful, awesomeどちらも「恐れに満ちた、恐れを感じさせる」といった感じの意味合いの単語となる。

ところが、このふたつの単語は、現在一般的にはawfulは「ひどい」、awesomeは「素晴らしい」と全く正反対の意味となっている。(例えば、Marvel vs Capcom 3では、21-25コンボはAwesome!のメッセージが出る)

どこでこの違いができたのだろう。
実はこのふたつの単語は、成り立ちこそ同じようにみえるが、その登場時期が大きく離れている。

awfulはegeful, aghefulなどと少しずつ形を変えながら使われており、少なくともA.D.1000年頃には単語として成立していたようだ。元となる単語awe(ege, aghe)は聖書の影響(神に対する恐れ、畏怖、stand in awe of God)を受け、宗教的な意味合いを帯びていく。awfulも、この形で現れる14世紀には「恐れるに値する、尊敬するに値する」という意味合いを持っていたが、より宗教的な意味合いを多く含む言葉として使われたようだ。人智を超えたものに対する畏怖、といった感覚だろうか。

一方、awesomeの初出は1598年で、当初は「非常にうやうやしい」という、畏怖している状態を指す言葉として使われたらしい。awfulな対象に、awesomeな態度で接するわけだ。しばらく経って1670年代から、今回の話に関わりがありそうな「畏怖を感じさせる」という、awfulに近い意味で使われ始める。

つまり、awfulとawesomeは成立した年代には700年近い、あるいはもっと大きな開きがあるものの、1700年代には、おそらくは似たような意味の言葉として使われていた。

先に意味合いの変化が生じたのは、awfulの方だ。1809年に「非常に悪い」という意味での用例が残っているらしい。

ここからの話は多分に僕自身の推測も含むものとなるので注意して欲しい。

我々にとって、もっともawfulなもの、full of aweなものとはなんだろうか?もちろん神だ。しかしながら、神を普段見ることはできない。
ところが、よく考えて欲しい。神を直接見ることはできないが、神の御業をみることは、比較的頻繁にあったといっていい。それはつまり、大災害だ。

そして、1800年代において既に非常に古い単語だったawfulには、災害に対する感情を表す意味合いが、残っていたのではないだろうか。
そのため、「どうしようもない、手の施しようがない」→「非常に悪い」という具合に、用法が変化していくのは、自然なことだろう。

一方、awesomeが登場するのは1670年台だ。ピューリタン革命だとか王政復古だとか議会政治だとかで、非常にごたごたとしている時期でもある。この頃には、aweという単語の持つ意味合いも、より世俗的なものへと変化していたと思われる。

つまり、この頃登場したawesome(の中にあるawe)には、かつての人智を越えるものに対する畏怖という要素は、あるにしても、薄まってきていた。誰かの持つ富や権力、軍勢といったものに対する感情の要素のほうが大きく、結果的に、より肯定的な意味合いとして使われるようになった。

かくして、awfulは否定的な意味に、awesomeは肯定的な意味合いへと、その使われ方が分化したのだろう。

さて、awesomeが現在のように「すごい、素晴らしい」という感じのカジュアルな使われ方をされ始めたのは、実は割と最近だ。どうやらカリフォルニアのサーファーの間で使われだしたのが、映画や歌で広まったという説が有力らしい。

ちなみに、awfullyという単語には、かつてawfulが持っていた意味合いの名残があって、awfully niceという具合に肯定的にも使用できる。

今回の話は、これで終わり。

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