horrorとterror、ついでにterrific

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horrorとterrorというふたつの単語がある。

どちらも基本的には、(強い)恐怖という意味なのだが、このふたつにどのような違いがあるのだろうか。漠然とした、こんな感じなのかなといった感覚はあるものの、きちんとしたところを調べてみた。

horrorは、実際に起こっている(あるいは既に起こった)ことに対する恐怖。一般的には、生理的な嫌悪感に基づく恐怖。例えば、人が熊に襲われているビデオを観た時に感じるのは、horror。

terrorは、まだ実際に起こってはいないが、予測される悪いことに対する恐怖。一般的には、自分の命の危険を感じることに対する恐怖。例えば、森を歩いていたら熊に出くわしたとする。その時に感じる、熊によって自分が殺されるかもしれないという恐怖がterror。

マンションの5階に住んでいるとする。夜、そとから叫び声が聞こえてきたのでベランダに出てみると、まさに人が暴行を受けている最中なのを目撃する。そのとき感じるのはhorror。犯人と目があってしまい、数分後に部屋のドアが激しくノックされた時に感じるのはterror。

呪いのビデオの、得体の知れない映像を観た時に感じるのはhorror。呪いのビデオに登場する女が、テレビそのものから這い出てきた時に感じるのはterror。

もちろん、他に様々な意味合いが付加されているのだが、基本的な意味合いとしては、以上のような解釈となるらしい。

さて、horrorもterrorも、そこから派生するいくつかの単語がある。horror, horrible, horrify, horrific、そしてterror, terrible, terrify, terrific。この中で、ひとつだけ妙な意味になっている単語があるのだが、分かるだろうか。

terrificがそれだ。元々は恐怖を感じさせる、つまり恐ろしいといった意味合いだったのだが、1800年台後半から1900年台の半ばにかけて凄い、素晴らしいなどといった風に意味合いが変化していき、現在ではほぼ肯定的な意味でしか使われない。日本語で言うと、ヤバいという言葉が近いのかもしれない。

一説によると、1933年の映画King Kongのポスターにおいて、terrificが肯定的な意味合いで使われたのが大きな転機となったらしい……が、実際に確認してみた感じでは、残念ながら都市伝説のようだ。

このように、時代とともに単語の意味が変化していくことをsemantic changeと呼ぶ。その中でも、terrificのように、良い方に意味が変化していくことを、ameliorationという。ごく最近のameliorationの例としては、geek(技術系オタク)という単語がある。元々は否定的な意味だったのだが、コンピュータ・インターネットの普及に伴い、肯定的な意味へと変化した。

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