(fly) under the radar

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十年一昔というなら、(2020年現在からすると)もう二昔~四昔ほど前のことになるだろうか、フライトシミュレーターこそPCゲームの華だという時代があった。
僕も例に漏れずF-15 Strike Eagleや F-117A Nighthawk Stealth Fighter 2、あるいは一次大戦ものならKnights of the Skyなどで遊んだものだ……しかしこのラインナップ、よく見たら開発元が全部MicroProseだったりするな……。
もちろんフライトシミュレーターといえば必ず名前が挙げられるであろう、Microsoft Flight Simulatorでも遊んでいた。僕もまた、最新作2020の発売を心待ちにしている一人である。

今やフライトシミュレーターの黄金期は昔の話となり、最近では一部の好事家が遊ぶといった市場規模になってしまっている感がある。特に日本国内で、現在一般人にも名前が通じるのは、かろうじてバンダイナムコのエースコンバットシリーズくらいだろうか。リアル系では無いが。

さて、戦闘機系のフライトシミュレーターで遊んでいると、しばしば敵のレーダーに引っかからないように飛ぶといった内容のミッションがある。
極端なケースだと、渓谷のような狭い地形を抜けて飛ぶように要求されることもある。戦闘機が狭いところを飛ぶというのは、やはり物語的にも、絵面でも盛り上がるからだろう。エリア88のオペレーション・タイトロープとか、スター・ウォーズEP4のデス・スター戦とか、僕は大好きだ。……みんなも好きでしょ?

まあ、それは極端な話にしても、低空で侵入することにより、レーダーに引っかかりにくくするというのは、実際の軍事行動でも行われることらしい。その飛行手法はnap of the earthと呼ばれており、日本語では一般的に「匍匐飛行」と訳されるようだ。
この”nap”は、居眠りという意味ではなく、「布の表面の毛足」を意味する。タオルや絨毯の表面を思い浮かべると、分かりやすいかもしれない。earth、つまり地表の表面をなぞるような飛行、という意味である。ちなみに、居眠りのnapとは語源から異なっている。

さて、今回の表題”(fly) under the radar”というフレーズの元の意味は、ここから来ている。レーダーの下をかいくぐって飛ぶ→レーダーに引っかからない→見つからない・気づかれない(ように行動する)、という意味合いになる。
under one’s radarという表現も可能で、例えば”That was under my radar.”と言えば「それは知らなかった・気づかなかった」という意味である。
ちなみに、逆にレーダーに引っかかっている状態はon the radarとなる。さっきの例でいくと”That was on my radar.”といえば、「知っていた・気づいていた」となるわけだ。

少し変わったところでは「見過ごされていた」という意味で使われるときもある。例えば、”20 games under the radar in 2010s”なら、「2010年代に、見過ごされていた20のゲーム」となる。これは、知名度が低いせいで正当な評価を受けられなかった、という意味を含む表現になる。

……ところで、そもそも何故低く飛ぶとレーダーに引っかからないのだろうか。理由は大きく分けると3つあるようだ。

1.そもそもレーダーは上を向いていることが多い。一般的な(管制などに利用されている)レーダーは、通常の高度を飛行している航空機に対して向けられており、低高度の飛行物体の探知は想定されていない。

2.特に地上において、一定以下の高度の物体については、レーダーで探知するのが難しい。地形・建物などによるノイズの影響で、地表に近い位置にある物体は検知が難しく、また、検知できたとしても地形・建物に紛れてしまい、飛行体であるかどうかの判断ができないため。

3.遮蔽物の無い平らな状況においても、地球の丸みの影響により、低く飛ぶほど探知される距離は短くなる。例えば海上であれば、水平線の下に隠れるようなイメージになる。……ただし、レーダー波は回折するため、気象条件にもよるが、実際にはかなりの距離まで探知できるらしい。

上記のうち、一般的に”under the radar”という状況を想像した時、当てはまるのは2番になると思われる。
ただし、現代においては、ドップラーレーダー(反射されたレーダー波の波長をフィルターし、移動物体のみを捉える仕組みのレーダー)を使用することで、地表近くの物体を探知することもできる仕組みも存在するようだ(ルックダウン能力と呼ぶらしい)。

今回の話は以上。

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