ジャイアントロボ THE ANIMATION ~地球が静止する日

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グルメコミック・アニメの流派(といっていいのかどうか分からないが)の一つに、料理を食べた時の感動を大げさに描写する、というものがある。

時には食べた人を異世界にいざない、時には料理から光があふれ出し、時には食材が踊りだすといった、冷静に考えてみるとおかしな、しかし妙な説得力にあふれた、あの演出のことである。

少し前なら「焼きたてジャパン」、最近なら「食戟のソーマ」あたりがそうだろうか。ワインをあつかったコミック「神の雫」などもこの系列といえるだろう。

そして、その嚆矢といえるのが、アニメ版「ミスター味っ子」だ。

ミスター味っ子の原作コミックでは、ご存じの方も多いと思うが、実はそこまで大げさな演出はされていない。無論、多少は大げさに描写されているものの、料理をあつかう作品の常識の範疇のものであって、味皇様が口からビームを吐いたりはしない。

我々が知るあの演出は、もともとアニメ版のオリジナルな要素というわけだ。もっとも、後に原作の方も、アニメに引っ張られる形で、ややオーバーなリアクションを取るようになっていくわけだが。

さて、このアニメ版のミスター味っ子を監督していたのが、今川泰宏だ。今川泰宏といえば、そう、「機動武闘伝Gガンダム」の監督でもある。その話を少しだけしておこう。

「機動戦士ガンダムZZ」(1986)以来、久しぶりにTVシリーズとして復活したガンダムリリーズが「機動戦士Vガンダム」(1993)だった。富野由悠季を総監督に据え、その後の宇宙世紀を語るものでありながらも、前作とは(メカ以外の)つながりをほとんど持たない、新たな時代のガンダムであった。が、全体としては比較的スタンダードな富野作品だったともいえる。カテジナさんとか。

その翌年、新作のガンダムとして、文字通り「ぶっこまれて」きたのが、「機動武闘伝Gガンダム」である。島本和彦デザインの暑苦しいキャラクターが縦横無尽に動き回り、ガンダムファイトで必殺技シャイニング・フィンガーを叩き込むその展開に、従来のガンダムファンは騒然とした。
おそらくだが、第一話を見終わったあとに一番多かった感想は「なんじゃこりゃ!」だったのではないだろうか。とにかく、全てが衝撃的だった。

今では当たり前のように受け入れられている(?)Gガンダムだが、放送開始直後は評価は二分されていたと言っていいだろう。……いや、もう少し正確に書こう。作品としては申し分のない出来栄えであった。しかし、「これをガンダムと呼んでもいいのか?」という思いが、我々の心のどこかに残っていたのである。

結論を言おう。ガンダムと呼んでいいのかどうかなどと、そんなレベルで悩んでいた我々が浅はかだった。

まさにこれこそが、ガンダムに必要なものだったのだ。

それを証明するかのように、翌年、やはり従来のガンダムのイメージから大きく離れた「新機動戦記ガンダムW」が放送され、空前のヒットとなった。ガンダムが真の意味で一般化したのは、この時である。そして、Gガンダムがあったからこそ、ガンダムWは従来のガンダムの軛を逃れることができたのではないかと、僕は考える。

となれば、V→G→Wという一連のガンダムは、まさに「守破離」を体現したものではなかっただろうか。一応書き添えておくと、今川監督は「聖戦士ダンバイン」「重戦機エルガイム」「機動戦士Zガンダム」などでの演出でも知られており、いわば富野由悠季の直系でもある。

さて、ガンダムの話はそれとして、実は「機動武闘伝Gガンダム」の放送中、僕を含む一部のアニメファンは少しやきもきとしていた。というのも、今川監督はもう一本シリーズを抱えていたからだ。

それが、OVA「ジャイアントロボ THE ANIMATION ~ 地球が静止する日」である。全7話(+外伝3話)の発売日は、以下の通りとなっている。

Episode1:1992年7月23日
Episode2:1993年2月21日
Episode3:1993年8月21日
Episode4:1994年1月21日
外伝1(裸足のGinRei):1994年2月21日
Episode5:1994年10月22日
外伝2(鉄腕GinRei):1995年1月21日
Episode6:1995年6月25日
外伝3(青い瞳の銀鈴):1995年9月25日
Episode7:1998年1月25日

Gガンダムの放送は1994年4月~1995年3月なので、まさにこの期間のど真ん中である。Episode 7以外はそれなりに順当に出ているし、やきもきするほどのことも無いんじゃない……?と年表を見た方は思われるかもしれないが、そこには少し事情がある。

というのも、Episode 4~5が出たあたりで、どうも製作予算が尽きつつあるらしいという話が流れてきていたからだ。そこで急遽(金策を兼ねて)制作されているのが、外伝である銀鈴シリーズらしいと。そして、その情報を裏付けるかのように、本編の発売間隔がどんどん怪しく伸びていった、ちょうどその時期に放送されたのが、Gガンダムだったのだ。

とはいえ、Gガンダムが終了したあと、一応ジャイアントロボもEpisode 6までは(多少遅れはしたものの)ちゃんと出たので、あと一話で終わりか~、いつ出るんだろうな、などとやや楽観視してもいた。

……それから2年以上も待たされるとはつゆ知らず。

実際のところ、途中で止まってしまったOVAのシリーズなどいくらでもある。ジャイアントロボもその仲間入りか……と半ば諦め、さらにその諦めすらも忘却しつつあった頃に、Episode 7の発売日が決定したとのニュースを耳にしたときは、思わず「え?ホントに出るの?」と疑ってしまったほどであった。ともあれ、無事に完結して本当によかった。

話全体としては、世界征服を目論む秘密結社BF団と、それに対抗する国際警察機構の戦いという構図である。BF団と国際警察機構には、それぞれに十傑集、九大天王と呼ばれる一騎当千の能力者たちが存在しており、物語の進行自体はこの能力者たちのバトルが中心となっている。

つまりこのアニメは、ジャイアントロボと題されてこそいるものの、ロボの活躍するシーンは抑え気味で、どちらかというと「横山光輝オールスター超人バトル」作品であるわけだ。

横山光輝といえば、「マーズ」「鉄人28号」「バビル二世」などのSF娯楽作で有名である一方、「横山光輝三国志」「水滸伝」などといった中国物や、「仮面の忍者 赤影」「伊賀の影丸」などの忍者もの、果ては少女向けの「魔法使いサリー」まで、実に幅広いジャンルで活躍した、時代を代表する漫画家だ。

その横山光輝の様々な作品からのキャラクターが一堂に会し、今川監督自らの脚本による外連味あふれるセリフを応酬しながら、大活劇を繰り広げるのである。

これが面白くないわけがない。

とまあ、今川監督の独特な演出(+キャラクター作り)、そしてかなり豪華な声優陣が注目されがちな作品ではあるのだが、ここではもう二つ注目すべき点を述べておきたい。

ちなみに、巨大ロボット愛に満ち溢れたアバンタイトルの作画は庵野秀明らしい。

一つが、音楽だ。天野正道作曲、ワルシャワフィル演奏の豪華な音楽は、各曲単体で見ても完成度が高い。

さらにその上で、作品全体としても、主にそれらの曲を長尺で用い、きちんと物語の起伏をあわせて丁寧に制作されている。もはや劇場作品並みのクオリティである。OVAできちんとここまで作っている例は少ないのではないだろうか。(ちなみに、長尺の音楽+進行のシンクロと言えば、ゲーマーとしては「レイディアントシルバーガン」や「斑鳩」を想起してしまう。)

一部でロボの発進のテーマはモーリス・ジャールによる「パリは燃えているか」序曲のパクリではないかなどと言われているようだが、一話でパリが壊滅する展開なども踏まえると、パクリというよりは明らかにオマージュだろう。

もう一つは作画。
全話に渡って作画監督に名前が入っているのは、山下明彦だ。山下明彦といえば、中期以降のジブリの作品群を支える作画として有名ではあるが、このOVAはそれより以前の作品にあたる。レトロゲーマーには、「ワンダープロジェクトJ2」(N64)のキャラクターデザインをしていると言えばピンとくるだろうか。

大胆に漫画風に動くエージェント同士の戦いも格好いいのだが、ロボット同士の重量感あふれる動きも実に素晴らしい。今風なヌルヌルとした枚数の多い作画ではない、リミテッドな中での気持ちのいい作画は、今川演出にもピタリとハマっていると言ってもいいだろう。これは是非堪能してもらいたい。

まあ、実際のところ、シナリオ全体を冷静に考えてみたときは、ちょっとそれってどうなの?と思う部分も無くはないのだが、そこはねじ伏せに来る今川演出に敢えて身を委ね、古き良きエンタメ作品として楽しんで欲しい。90年代を代表するにふさわしい、作りもキャストも音楽も制作陣も、全てが豪華な作品である。……製作期間も。

以下余談。
今川監督は、後に同じ横山光輝原作の「鉄人28号」のリメイクも手掛けている。こちらはスターシステムは採用せず、シナリオを再解釈しつつ、テーマ重視のどちらかというと重めの作品となっている。
また、正直一般人にはオススメしづらいのだが、もっと煮詰まった今川作品が観たいという人向けに、「真マジンガー 衝撃! Z編」(2009)も紹介しておく。なんというか、毎話毎話脳の血管が切れるんじゃないかと心配してしまうような今川節の塊となっている。好きなんだけどもう続編は出なさそう……。

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