ホーミングはなぜ誘導なのか

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すでに知ってる人、気づいている人も多いだろう小ネタ。

ホーミングと聞いたら、何を思い浮かべるだろうか?
アニメファンなら、板野サーカスで煙を引いて飛びまわるミサイル群だろうか。

個人的には、トップをねらえ!のホーミングレーザーを推しておきたい。レーザーなのにホーミング。いやいや、無いでしょそれはと思いながらも、あの勢いのいい演出と、説得力のある作画に血が滾った諸兄も多いだろう。そして、バスターミサイルはともかくとして、バスターシールドである。いやいや、無いでしょそれはと思いながらも(ry

ゲームファンならどうだろうか。
グラディウス3で一番使いにくいミサイル?……いや、それはホーミングじゃなくて、コントロールミサイルでんがな……と、わかりにくいボケを挟みつつ。
やはりレイフォースに始まる、一連のレイシリーズだろうか。ロックオンをかけてから撃ち込む分説得力があったし、スコア稼ぎの要でもある、美しい武器だ。

そういえば、(ホーミングではないが)曲がるレーザーといえば、個人的にはアニメ「ガルフォース」の艦隊戦で、レーザーの表現を観たときの衝撃は今でも覚えている。レーザーって曲げてもいいのか!と気付かされた瞬間でもあった。

理屈はいいのだ。カッコよければ。

さてアニメの話はさておき、ご存知のように、例えばいわゆるホーミングミサイルという兵器は、実在する。
もっとも、一般的には「誘導ミサイル(Guided Missile)」と呼称され、ホーミング(homing)という言葉は、誘導方式の名称に入ることが多い。例えば、電波ホーミング誘導なら、Active Radar HomingによるGuided Missile……といった言い方になるようだ。

ところで、このホーミングという言葉、少し不思議な使い方ではないだろうか。”homing”を単純に字義通りに解釈すると、home-ing、つまりは「家に帰る」という意味である。なぜ現在のような、誘導あるいは追尾という意味合いを持つようになったのか。

先程も書いたように、homingは「家に帰る」という意味を持つ言葉だが、実は学術的な用語でもある。
その意味は、「帰巣本能を持つ」というもの。なるほど、誘導という意味には確かに少し近いような……?

ここで、少し考えてみてほしいのだが、数ある帰巣本能を持つ生き物の中に、その本能が非常に人間の役に立つ、かつ極めて馴染み深い動物がいる。なんだろうか。

それが、鳩だ。
その帰巣本能と飛行能力により、伝書鳩として利用されてきた。

稀に誤解している人もいるようなので、念の為に書いておくだけだが、伝書鳩は、あくまでも鳩の帰巣本能を利用しているだけであって、「どこでも好きなところに物を届けられる」わけではない。基本的には、どこから飛ばしても常に鳩舎(巣)に物を届けられる、という仕組みのものである。
とはいえ、訓練の仕方によっては、2点間(餌場と鳩舎)を往復するようにしたり移動式の鳩舎に帰ってくるようにもできる(移動鳩と呼ぶらしい)ようで、我々がぱっと想像するよりも、ずっとフレキシブルな運用ができるようだ。

伝書鳩は最低5000年、もしかすると7000年もの歴史を持つ、実に由緒正しい通信手段だ。よくよく考えてみると、無線通信が一般的に行われる以前では、おそらく最速の通信手段でもあったわけで、おそるべし伝書鳩、である。
さすが、RFC1149に規定されているだけのことはある……いや、もちろんこれ自体はジョークだが、おそらく不可能では無い。
実際、20世紀半ばまではごく一般的だったし、21世紀に入っても実用的な通信手段として用いるケースもあるようだ。
ミュージカル「プロデューサーズ」ではヒトラー大好きドイツ人のフランツが伝書鳩を飼育している(アドルフと名付けられた鳩が映画版でナチ式敬礼をするのが可愛い)し、日本では「レース鳩0777」なんてコミックもあった。
もっとも、ごく近年は、さすがにインターネットに押されて、徐々に引退しつつあるようだ。

さて、この伝書鳩、実は英語で”homing pigeon”と言う。

五感のみにとどまらず、磁力をも感じて行われるという鳩の帰巣。その「魔法のようにどこからでも目的地に到達する能力」が、homingという言葉の意味に加わったのは、伝書鳩の影響だというのは、想像に難くない。

かくして現在の用法になった、というわけである。
今回は、以上。

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