はまじ再臨とthe Last Expressの思い出

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今回は、懐古厨らしく、思い出を語ることにする。

昔、関西限定だったらしいが、学校が長期休暇に入る期間中、「アニメだいすき!」という一種の特番が放送されていた時期があった。僕はこの番組をすごく楽しみにしていて、毎回VHSのビデオにとって保存し、何回も観直したものだった。

アニメだいすき!で放映された作品リストを確認してみたが、おそらくほぼ全部の放送を観ていたと思う。そして、改めて見るに、そのラインナップは、とんでもなくマニアックだ。きっと当時の僕に、そして今現在の僕にも多大な影響を及ぼしている。

the八犬伝(OVA)を最初に観たのは、このアニメだいすき!だ。
そして、今なお語り草となっている、新章第4話「はまじ再臨」と出会ったのだ。

どのような動画かは、はまじ再臨と検索してもらえれば、比較的容易に見つかると思う(著作権的な問題で直リンクは避けておく)。

ひとつ言っておかねばならないことがあるとすれば、the八犬伝のアニメシリーズを通して、この回だけが、とんでもなく異質な作画だったということだ。他の回は、ごく普通のアニメなのだ。正確には新章第3話「妖猫譚」の回(うつのみやさとるコンテ・橋本晋治作画)も見どころは多かったりするのだが、「はまじ再臨」のような、別次元の異質さではない。

そして、正直に言おう。初めて観た時の感想は
「なんだこれ?」
というものだった。

当時の僕は、衝撃は受けたものの、この回がどういった方向を目指していたものだったのか、そこまでは理解することができなかったのだ。
これが、1994年のことだ。

ここで話は変わるが、少し時は流れ1997年。PCゲーム史上に名を刻む名作が発売された。
タイトルは、”The Last Express”。

え?なにそれ、知らない、という人が多いかもしれない。
無理もない。実際の所、ほとんど売られていないからだ。一応、豪華声優陣による吹き替えが行われた日本語版(邦題:ラストエクスプレス)も出ている。僕自身は発売日に購入したのだが、店頭に置かれていた期間は短かったように思う。どうやら発売元のBroderbundの身売りだとか、アジア通貨危機による流通の撤退など、いろいろな問題が重なった結果のようだ。

ごく簡単に紹介すると、WW1直前に、オリエント急行の中で巻き起こるミステリを、完全リアルタイム(正確には6倍速らしい)で再現した野心作だ。登場人物は全てそれぞれの目的に従って車内を動き回り、会話を交わし、行動を起こす。

インタフェースこそ、今では古く感じるMYSTスタイルのポイント&クリックだが、今まさにそこにいる臨場感という意味では、未だにこのゲームを超えるADVは出ていないのではないだろうか。20年経ってなお、色褪せないすごいゲームである。

このゲームの内容に踏み込んだ紹介をすると、非常に長くなる。いつか語る日がくるかもしれないが、今回は本筋から外れるので割愛する。幸いなことに、近年英語版がPCや携帯端末向けに再リリースされているので、興味のある方は調べてみてもらいたい(残念なことに日本語版は再販されていない)。

さて、”The Last Express”は、Jordan Mechnerの作品だ。Jordan Mechnerの他の作品、”Karateka”や”Prince of Persia”でもそうだったのだが、グラフィックを作成するに当たっては、ロトスコープの技法が取り入れられている。つまり、まず実写でビデオを作成し、それをトレースする形でコンピュータ上に取り込んでいるのだ(もちろん、さらに最終的な調整が加えられる)。

“Karateka”や、”Prince of Persia”ではサイドビューのみのグラフィックだが、”The Last Express”では、基本が一人称視点なのもあって、現実に近い視点からの動きが描かれていた。

そのアニメーションに、ふとした既視感を覚えたのだ。
あれ、これって「はまじ再臨」で観た輪郭の動きに似てるかもしれない、と。

そう感じた後、改めてDVDで「はまじ再臨」を観直してみた。
そして思ったのは、その作画の根底にあったのは、実は徹底したリアリズムの追求だったのではないか、ということだ。
そして、それはおそらく、三次元的な意味でのリアルではない。ロトスコープに近い、カメラ(あるいは網膜)に写っているはずの輪郭を、本物に忠実に写し取るという方向性の、リアリズムだったのだろう。
そこに、アニメーションとしてのデフォルメや、カメラ演出などが加わった結果、あの強烈な、印象に残る作画となったのだと思う。

このように僕は、”The Last Express”を遊んでいる最中、「はまじ再臨」を、数年越しに、思わぬ形で再認識することになった。実際の所、僕の解釈が正しいかどうかは分からない。ただ、そう感じたのだ。

それ以来、この何の関係もない2つの不朽の名作は、僕の中でだけは、何故か分かちがたいものになってしまっているのだ。

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「はまじ再臨とthe Last Expressの思い出」への3件のフィードバック

  1. はじめまして!
    もしや伝説のラストエクスプレス日本語版を現役でお持ちなのですか!?

    1. 残念ながら、引っ越しを重ねる途中で手放してしまいました(というか箱物のPCソフトはほぼ処分してしまったのですが)。
      しかし、まさかこんな希少品になるとは……という思いです。日本語版は声優陣も豪華で独特の良さがあるので、どこかで再販してほしいですね。

      1. 返信ありがとうございます。
        そうだったんですね。
        引越しの時って変な思い切りが出て後悔するようなものまで捨てちゃいがちですよね😅

        このソフトを発売に買う慧眼に痺れました!

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